トークリレーで語るSAKUHO 3/4
なんとかここまで辿り着いた。
高橋克典
トークリレー5回目はNegAcoustika一番の若輩者、高橋です!
まずはこんな素晴らしいアルバムの製作に携わることが出来たことを、とっても光栄に思っています。
2018年にバンドに参加させていただいた当初は、びっしりと音符で埋め尽くされた楽譜にかなり慄きましたが、なんとかここまで辿り着いた!って感じです。
しかもレコーディングは自分の大好きな長野県の八ヶ岳の麓。一生の夏の思い出ですー。
NegAcoustikaにおける打楽器の役割は、ロックやジャズにおけるものとは違い、クラッシックにおけるものに近いと自分は考えています。
このバンドで自分はカウントを1曲も出しません。
各曲の演奏は川崎さん、KOWさん、坂野さん、星さんが紡ぎだす音のタクトに合わせて進行していき、自分もそのタクトに合わせて曲の雰囲気や彩りを増幅したり、長い曲での場面転換をより有効に際立たせることをメインに考えながら演奏しています💦
そんなクラッシックの要素を多く持つこのバンドがクラッシックホールで一発録音をしたことは、間違えなく正解だったと思っています。
それにしても今回の録音場所となったメリアホールは本当に素晴らしかったですねー。
マイクを立てなくても細かい音が遠くに飛んでいく感覚はとにかく快感でした。あ、でも楽器を持替える時に出るわずかな音もしっかり聴こえてしまうので、かなり工夫と訓練が必要でしたが。。。(苦笑)
スタジオでは絶対聴くことができない、ホールの響きと一体となった本当に美しい各楽器の音とアンサンブル。
是非是非聴いてくださいね!
(文・高橋克典)
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迷ってるそぶりを見せずに
ジャッジ"すること。
中田太三
KOWさんとは東京キッチンにミュージシャンとして参加した頃からだから四半世紀近い付き合いかな? もともと私は伝統音楽系の奏者もしているのですが、色々なところでレコーディングやPAを見ているうち、和楽器の音を知らないエンジニアが多いことに気付き「これなら自分がやった方がマシじゃん?」と思って“自主リリースのために”機材を揃えて始めたのがいつのまにか仕事にもなってます?!
以前は演奏をマルチでレコーディングしてトラックを並べてミックスしていく...ということに面白さを感じていましたが、近年は演奏そのまま「EQとリバーブ以外は使わない!」みたいな自然派志向(?)になり、機材の発達も伴って昔と違い(歳のせいもあり 笑)如何に移動が楽でセットアップが早いか?に変わっています。
...そんな中での「NegAcoustika」。何度かライヴは観ていましたが、現在のフィックスした編成での音はリハーサルで初めて聴きました。今回のレコーディングはホールでのステレオワンポイント一発録音という前提でした。リハスタジオを動き回ってメンバーの出す音を聴きながら全体像をイメージするのが最初の仕事です。イメージしたらその後は必要以上に曲の確認とかはしません。楽曲が耳に馴染んでしまうと、現場での迷いネタが増えるというか客観性が削がれるだけなのです。特に第三者的なプロデューサがいないレコーディングではOKテイクか否か?の判断をエンジニアに委ねられることが多いので、楽曲が頭に入る過ぎていると客観的な判断が出来ないのです。(私はです。逆の手法の(頭に楽曲を叩き込んで判断するという)方もいます...)
当日ホールに入って、ほどよい残響に“これはレコーディングしやすいな”と思いました。最初にするのはグラピの配置。クラシックではないので「美しいけど、響かない場所」を探します。どうしてもグラピはふくよかに響くので、実はこういった編成のレコーディングでは「響き」が邪魔になることが多い。屋根(蓋)の開け具合を変えたりしながらピアノが決まれば、次はパーカス。金物(特にスプーン 笑)が鮮烈に響くホールなので他と喧嘩しないような位置にセット。ギター・ベース・チェロはアンプ併用なので奏者の場所にかかわらず細かい位置調整が可能だったのは助かりました。
写真を見て頂ければわかるのですが、配置はステージ中央ではなく下手寄りになってます。これはもう「なんで?」と聞かれても『勘!』としか言い様がない…。中央ならどう? 上手寄りならどう?...というのはあるのですが、それをやっているほど潤沢な時間があるレコーディングなんて普通は有り得ないわけで、経験値と勘を頼りに“迷ってるそぶりを見せず”にジャッジするのが我々の仕事でもあるのです。...その意味では、正直者はこの仕事に向かないかも?ですね(笑)
レコーディングというのはその場で奏でられる音楽の一面を切り取っただけのものなので、その場で起こったすべてが入っているわけではありません。ですが、聴いた方がそこにはない音なり空気感なり息吹のようなものを感じて頂ける音が納まっていれば幸いです。
※参考までにマイクはメインに AKG C451B を ORTF 方式で、サブに RODE NT4(XY 方式)。DAW は MAGIX Samplitude Pro X3。Audio I/F は PreSonus Studio 68c。
(文・中田太三)
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