一発録音終了。疲労困憊。されど安堵。

最初に、
響きのよいこのホールとの出会いがあった。

以前から、
ネガコの音源を作るなら、
スタジオでやるにせよ、
ライブを収録するにせよ、
一発録音しかないのでは、が
バンドとしての見解となっていた。

今回、
それがこのレコーディングに結実する。
録音エンジニアは
中田太三さんが担当。
ユニークな邦楽演奏家にして、
生音録りの豊富な経験とノウハウ。
始めから終わりまで安心して
僕らが演奏することに集中できるのは、
まさにこの人のおかげだ。
レコーディングは2日間。
1日目はセッティングに
かなりの時間を費やすだろうと考えていた。
なぜなら一発録音だから、
後から楽器毎に音量や位置を
変えることはできないのである。
しかし中田さんの判断はとても手際よく、
設営開始から2時間も経たずに
スタンバイ。
1日目は3曲をレコーディング。
だいたい3テイク、多くて4テイク。
全員が「納得」した時点で、
その曲の収録はOKとなる。

ちなみにこの佐久穂町のメリアホール。
今年の3月に来た折に、
その響きの素晴らしさに感動した。
普段はアンプを使って補強している
パーカッションの音も、ここでは生のままで
見事な輪郭で収録される。

1日目はかなりスムーズにいく。
メリアホールの館長に一曲聴いて頂く。
後で知ったのだが、
とても気にいってくれて、
先先、こちらのホールで
ネガコのコンサートをしたい、と
言ってくださる。

こうしてメンバー全員、気持ちよく
一発録りセッションの1日目が終了。
僕は安堵する。
この進行具合なら明日も上手くいく。
そう思えたのである。

これが甘かった。
19時にメリアホールを後にし、
東御市の農園ゲストハウス「おみやど」へ。
築100年を超える農家でプチ宴会。
明日に備えて夜半には就寝する。
翌朝目覚めると、そこは葡萄畑が広がる、
緑豊かな田園地帯。
気分良く目覚めた我々は
しばしのフォトセッションを楽しみ、
再びメリアホールへ、クルマを走らせる。
2日目のレコーディングが始まる。

Holy Ground Celemonyからスタート。
なかなかOKテイクがでない。
僕自身は冒頭インスト部に問題を抱える。
いくつかの方法を試し、
最後にたどり着いたのは、
ギター演奏姿勢の変更。
これが上手くいき問題クリア。

幸運なことにこのテイクに、
メンバー全員がOKを出す。
午前中をまるまる費やして。
話は変わる。
今回使用のピアノ・スタインベルグは、
日本には3箇所にしかないという貴重なもの。
20世紀初頭にベルリンで製作され、
長らく佐久穂町の小学校にあったそうだ。
今、ここメリアホールに保管され、
ホール用にグランドピアノ、
ホワイエ用にアップライト。
川崎薫によると「鍵盤のストロークが浅い」
ヤマハグランドも選べたが
「せっかくだから」という理由により、
スタインベルグに活躍してもらう。
ネガコの初音源、この意味でもレア!
丁度、お昼時なので、
隣町臼田の蕎麦屋「ともせん」に行く。
地元の方は「普通の蕎麦屋」と言っているが
とんでもないね!美味い😋
早々、ホールに戻れば 
13時を少し回ったところ。

最長曲Empty & Meaningless Hotに
取り掛かる。
まさに難物。
まともな演奏にならない。
いつもとは音の聞こえ方が異なるせいか、
うまく噛み合わない。
テイクを録り直すたびに、僕は
イントロのミニマルなギターシークエンスを
弾くことになるのだが、
これがエラく神経をすり減らす…
神経が疲労困憊していくのを感じる。
僕は年齢からすればまあ体力はある方だが、
神経は人並みに使うだけ疲労する。
そろそろ限界に近づいてきているみたい。
そのとき声が聞こえる…
ここまでやるのは一発録りだからだ 、と。
改めて思い直す。
あとから直すことはできない、
だからこの場での問題解決を促すのだ。
後戻りはないのだから。
…すべてを録り終えたとき、
時刻は16時をかなり回っていた。
レンタル終了時刻は17時。
まさにタイムリミットが近づいていた。

録音したての音を聴いてみれば、
通常のロックアルバムとは
まるでかけ離れた世界が
そこに立ち上がり始めた…

唯一無比、自分からそれを言う?
だってこれ以外に、言葉はない。

2日間のチャレンジが終わった。
しばし安堵できる。

次にはヴォーカル録りが待っている。

写真©️桐田仁(Negas公式記録員)

KOW's Music Site

私の名前はKOW。このサイト、そしてブログではKOWが携わる音楽へご案内します。作品、音源、動画、ライブスケジュールなどなど、KOWの音楽活動はこちらでどうぞ。 🔹ソロ 🔹キアトKIAT 🔹ファーカンダ 🔹NegAcoustika

0コメント

  • 1000 / 1000