カヴァーとトリビュートとネガコ

ここ数年「ライブであの曲をカヴァーする」
あるいは「今度はトリビュートバンドだ」
などというコトバをよく耳にする。
そこで気になりはじめた。
カヴァーという単語と
もう一つのトリビュートという言葉は、
はたして同じ意味なのか、
それともなにか違いがあるのか、と。
このままだと事あるごと気になり、
熟睡の妨げになるやもしれぬ。
そこでこの疑問を
プログレの碩学・斎藤千尋氏に
ぶつけてみることにした。

千尋氏は若かりし頃から博学で、
かのフールズメイト誌がプログレ誌として
もっとも尖がっていたころ、
ホークウインドとSF作家ムアコックを
関連させた紹介記事などを執筆し、
「コリャおもしろい物書きがいるな!」と
SFやファンタジー読みだった僕を
大ヨロコビさせたという一方的な
馴れ初めがあった。
その後、千尋氏が
Euro Rock Pressの編集長であったことは
広く知られているとおりである。
「うん、それはだな…つまりだな」と
千尋氏は語り始めた。
「まず、トリビュートバンドという言葉を
    用いる場合は、たいてい元のバンドの音楽
    あるいは楽曲のフルコピー、つまり
    再現を目指しているのではないか」
ふむふむ…
「そしてだな、カバーという場合には
   楽曲を自分なりに再解釈・アレンジする
   ことまでを指しているんじゃないかな。
   だから、カバーはオリジナル曲のやり方に
   こだわらないんだね」
なるほど!
リアルにはそんな意味を込めて
使い分けられているのか。
トリビュートは本来「賞賛」「賛辞」を
意味し、トリビュートアルバムといえば、
特定のアーティストにリスペクトを込めて、
その存在と作品に捧げられている。
なので収録されている楽曲は、
そのアーティストのもののみとなるが、
ただし演奏やアレンジが
オリジナル尊重かというとそうでもない。

一方、世にはカヴァーアルバムも多いが、
それは複数の他人の楽曲を
集めたものを指すようだ。
特定のアーティストの作品とは限らない。
そこで僕は自分が関わるバンドのひとつ
NegAcoustikaはどちらなんだろう?と
考えはじめた。
このバンドの楽曲はすべて80年代に、
その活動がピークに達したプログバンド
Negasphereのものに限られている。
その意味ではトリビュートバンドということになりそうだ。
さらに我々はNegasphere創始者で
鍵盤奏者の川崎薫を擁し、
二代目ベーシストの坂野誠治も!
…ということはセルフトリビュートと自らを称しても間違いではない。
しかしだ、違和感が残る。
それはNegAcostikaのバンドとしての狙いが
別のところにあるからだ。

僕らはアコースティック楽器を主体とした
アンサンブルを演るバンドで、
もともとシンセサイザーをはじめ
エレクトリックな楽器で曲を組み立てていた
Negasphereとは、その点が大きく異なる。

電気楽器はたとえばシンセならキーを
押しつづけることで
いくらでもロングトーンが出せる。
エレキギターにしてもアコギに比せば、
遥かに長くトーンを持続させられる。

これがアレンジに大きく影響するのは
いうまでもない。
アコースティック楽器の音は減衰が速い。

NegAcostikaの音作りは
この点においてゼロから始まっている。
アレンジを根本的なところから、
発想し直したのだ。

だから僕らのやっていることは
リ・クリエーション(再創造)なんだと思う。
曲はNegasphereのものであっても、
マネするようになぞるように
演奏するところはほとんどない。
すべてリ・クリエーションの結果と言っても
言い過ぎにはならない。
NegAcostikaはそのスタート時においては、
なんかまともな音楽にならずに
四苦八苦していた記憶がある。

エレクトリック楽器前提の楽曲を
アコースティック楽器に変換する難しさ。
そしてドラムはもちろん打楽器レス。
変拍子だらけなのにリズムが合わない。
シンフォニックなのに音が薄いなどなど、
問題を挙げたらキリが無かった。

来たる夏の終盤に
NegAcostikaはレコーディングに入る。
いよいよ満を持して、というわけだ。
その直後の9月23日には
「アフターレコーディングリサイタル」と
題して、渋谷の公園通りクラシックスにて
単独リサイタルが予定されている。
アルバム完成は、一応今年度内としておく。

2019は我々のリ・クリエーションの
真価を問う年となりそうだ。

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