ミックスカウンセリング
まず最初に断っておかなければならないのは
ミックスカウンセリングなんて言葉はない、
ということ。
音楽制作における「ミックスダウン」に
行き詰まった僕が
自分のお悩みを解消するために、
突破口を見出すために、
知恵と経験のある専門家のもとに駆け込み、
状況を聞いてもらい、
アドバイスをいただいた。
ただしここではタイトルを
考えなくちゃいけないから、
これをミックスカウンセリングと
名付けてみたというわけ。
その中身は実に濃いもので、
なにより的確❣️
自らミックスダウンをした経験をお持ちなら
きっとわかると思うが、
これがなかなか難しい作業。
録音されたさまざまな音、
ギター、ベース、キーボード、ドラム、
そして歌を、
ミキサーを弄りまわしながら、
ひとつの音楽にまとめていく。
まとめる音の数が多いほど、
音が全体に濁っていく傾向がある。
最初のうちは足どり軽く進んでも、
やがて迷宮に入り込む。
ミキサーのなかで素材を活かす音作りが、
素材のカタチが、見えなくなっていく…
このあたり、
ちょっと料理に通じている。
そこで、このまま続けていても意味ない、と
この道の達人・板谷文宏さんの門を叩いた、
という成り行きなのである。
3曲を聴いてもらい、
一曲ずつアドバイスを受ける。
一曲目「蔦」はヴォーカルとベースの音質の補正。「もっと膨よかにしてもいいんじゃない?」と。中低域で音がぶつかることを怖れて、そのあたりの帯域を削り過ぎていたのだろう、どちらも薄っぺらくなっていた。EQの数値が的確なら微妙に変えるだけで大幅に改善されることを体感した。
二曲目「透明なドラゴン」はシンバルとスネアへの違和感を指摘された。「実際はこんな薄い音じゃないよね」と。「スネアの一音にもっとニュアンスがあるはず」とか「シンバルにはもっと金属の厚みがあるのでは?」とか。ようはリアルの音をイメージしながら、音を作りをすることが、ポイントだということに気付かされた。
三曲目の「ウルプレ」はトラック数が20に達し、もっとも行き詰まっていた曲。開口一番「なにを聴かせたいのか、これじゃ見えないよね」と。そこで各トラックのプラグインエフェクトをすべて外すようにアドバイスされた。実際にやってみると、迫力はなくなるような気がするが、実は視界が広く開かれ、すべての音がよく聴こえるようになった。「マルチコンプをたくさん使っているが、これは確実に音を薄くするエフェクトだから、多用はオススメできない。使うならマトを絞って使うこと。そしてエフェクトの設定が確定したら、そのトラックを書き出して使うこと。これはエフェクトの同時使用数を減らすために有効だ」と。僕のミックスダウン混迷の原因が、エフェクトの使い過ぎにあることがよくわかった。
DTMというパソコンベースの
音楽録音編集作業は
基本一台のパソコンでなんでもできるため、
エフェクトを使い過ぎる傾向があるそうだ。
するとパソコンのCPUに
より沢山の演算をさせることになり、
これが音質クリアさを減じる原因になる。
また、トータルミックスのレベル設定が
高すぎることも音質劣化の原因になる。
アナログの時代には-12dbで
トータルミックスを仕上げることが
基準だったそうだが、
デジタル時代になってからは
それが-20dbになっている。
つまり0dbに対して20dbのマージンを
保持するのが標準だということになる。
もちろん音量は小さめに感じるだろう。
しかし音量不足は
マスタリングで引き上げるから、
まったく問題ではない。
そろそろ結論をまとめよう。
・常にリアルの楽器音をイメージしよう。
それが各トラックの音作りの指標となる。
・エフェクトが決まったら
なるべくそのオーディオファイルを
エフェクト込みで書き出して使おう。
・トータルミックスは
-20dbでまとめるようにしよう。
僕にとっては
モヤモヤがスッキリ取り払われて、
対処法も手に入れて、
今回のミックスカウンセリングで、
心身ともに解放された気持ちである。
指摘が具体的ならアドバイスも具体的。
そのうえで感覚をさらに磨くことの
重要性を理解させられた。
パソコンDTMが主流になってから、
ミックスダウンは身近になったものの、
その難しさ、広漠たる作業領域には、
確かな指標が不可欠だとつくづく思う。
板谷文宏さんは
録音編集エンジニアとして長く活動する方。
アコースティックな音楽に対する造詣が深く
カラヤンや米良美一といった音楽家の
演奏収録などを行なってきた。
茅ヶ崎駅前に編集スタジオがある。
KOWの作品「東京キッチン」以来、
お付き合いをさせていただいている。
僕にとっては、
苦しいときの板谷さん❣️
これで前に進める。
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