僕とフリオと諸星大二郎
諸星大二郎の短編漫画のなかで、
僕にとってかけがえのない作品の1つが
「僕とフリオと校庭で」
主人公の「僕」が
転校生の「フリオ」といるときに
感受するどこか不可思議な日常。
いつもの場所と隣り合わせの異界。
作者が幼い時代を過ごした、
東京の川沿いの工場時代の風景のなか、
2人の物語がつづられる。
僕は10代後半のある夕方、
杉並区本天沼の路上で
友達とダベっている最中、
南の方角の空の辺りに
おかしな動きをする光に気づいた。
それから2人でしばらくその光を見ていた。
「これはUFOだよ」と
僕らの意見は一致した。
東京キッチンというバンドを始めた頃、
フルート奏者として赤さんと言う人がいた。
中野ジモティな彼は、
中野に引っ越したばかりの僕を
いろいろな店に連れ回してくれた。
彼の連れて行ってくれる場所は
どこかねじれていて、
普通の場所ではなかった。
まるで宇宙人が経営してるようなお店。
その赤さんはある日ふいに
この世からいなくなってしまった。
そうやって僕のなかに刻まれた
不可思議な時空間たちが、
うまくすると歌になることが。
「ある晴れた日」はそんな曲のひとつ。
キアトのレパートリーとして、
演奏されている曲。
人は不思議なことを経験しても
いつか忘れてしまうものなのか。
君がいたから僕はあの不思議な経験をした。
そんな気がしてならない。
なぜなら君と会えなくなってから、
僕はそんな経験をしていないから。
僕のフリオ達はどこに行ったのだろう?
君たちも異界に行ったのかな。
諸星大二郎「僕とフリオと校庭で」は
ささやかな日常的ドラマのなかに、
背中合わせの異界を描き出した稀なる一作。
不可思議な羽衣を纏う逢魔ガ時の色彩感を、
モノクロの絵を通じて感じさせてくれる。
そんなことを考えていたら、
久しぶりに「ある晴れた日」を
1人で歌ってみたくなってきた。
1月7日のヴィオロンソロライブで
演ってみよう。
阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン、
ここもまた異界だから。
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