トシ・バウロンさんと初音合わせを。
「すばらしいアイリッシュ音楽のライブ
があるから行ってみない?」と
僕がお世話になっているスタジオ「響」の
オーナー小黒さんに声をかけてもらったのが
きっかけだった。
3年くらい前のことである。
そのライブはなにもかもステキだった。
蔵前にあるステキなゲストハウスの
お洒落なレストランバー。
オーストラリアから来日した
ジェーン&ジェームス・トンプソンさんの
豊かな自然感に溢れる歌と演奏、
さらにジョンジョンフェスティバルという
日本人トリオによる
まさにイキのいいアンサンブル…
どちらも素晴らしかった。
なかでも格別に印象的だったのは、
その2組のミュージシャンのどちらにも
参加したバウロンプレイヤーの演奏で、
正直言ってドギモを抜かれた。
それがトシ・バウロンさんとの
最初の出会いだった。
それまでもバウロンと一緒に演奏したり、
聴く機会は何度かあったけれど、
バウロンという楽器が奏でる音をこれほど
ダイナミックに感じたことはなかった。
例えて言うなら、襲いかかる黒豹のよう…
身を縮めて、次の瞬間、爆発的に跳躍。
その柔軟性と弾力とスピードと。
バウロンて、こんなに凄いんだ。
というか、トシさんが凄いのだ。
その日以来、トシさんのプレイを
僕が忘れることはなかった。
トシさんは僕にとって
憧れを抱かせるプレイヤー。
いつかご一緒してもらえないかなあ、と
思っていた。
幸い住まいが同じエリアなので、
一度、一緒に飲みに行ったが、
トシさんのライブは必ずといっていいほど、
僕がトーキョーにいない日にあたるので、
音楽的再会はなかなか果たせなかった。
それが先日、トシさんから僕に
声をかけてくれたのである。
「ちょっとスタジオで音合わせしません?」
こんなご時世、出かける予定はない。
しかも彼はこの後しばらく東京を離れる、
と言う。
僕にとっては、不要不急の真逆である。
トシさんとのセッションは、
天気の都合によりたった1時間だったが
本当に鮮烈だった。
緩急自在、その弾力のある鞠のような
サウンドとビートと合わせていると、
いつも自分の曲であっても別の手足が生えて
最後には翼までが備わって、
生き生きと自由に動き始めるのであった。
トシさんのすばらしさは、
そのプレイが人柄とコミュニケーションに
満ち溢れていることだろうか。
四角四面なところがまるでない。
そう、まさにトシさんはバウロンそのもの。
彼はバウロンの化身なのだ。
その後、スタジオから出てすぐの、
四季の森公園の桜の樹の下で
お互いのこと、音楽のこと、
これまでの活動のこと、これからのことを
じっくり語り合った。
トシさんのユニークな奏法、
コミュニケーティブな演奏スタンスの由来が
アイルランドの人々に
揉まれて育まれたことがわかった。
コロナ騒動で動きのとれない週末に、
(周囲に危険を与えることなく)
お互いのことを知り、
未来のことを考えるのは、とてもいい!
再会を約束して、別れた。
素晴らしい1日になった。
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