ハミル師(2)

ハミル師のバンド、ヴァンダー・グラフ・ジェネレーターの一曲"レミングス"を聴いた時のことは、たぶんこの先も忘れることはないでしょう。レコードの針を降ろして、十数秒もたたないうちに、どす黒く渦巻く煙のなかに赤い炎が見え、その下で身悶えし、苦しみ呻く人間たちの姿が見えたのです。見えた、というのはPVにそんな映像があった、ということではありません。音楽表現により地獄の釜の蓋がひらき、普段は見えない世界を幻視した言えば少しは伝わるでしょうか。音楽を通じて「地獄を見た」この体験は、あまりにも強烈で、僕は彼らの熱狂的なフォロワーになってしまいました。そりゃあ、あんたの妄想か錯覚だよ、とお考えかもしれませんね!でも、芸術や表現行為はときどき人間同士の垣根を超えて、恐ろしいほど伝わるのです。イメージとして。
そのとき僕は16歳でした。多感な時期であり、悩みを抱え、その答えを書籍と音楽に求めていました。
ハミル師の歌詞はとてつもなく自己探求的で、自我について、世界と自己との関わりについて徹底的に突き詰めていくものばかり。これこそ自分が求めていたものだ、と専門誌に対訳を探し、辞書を傍らに原詩を読み漁りながら聴かない日はなかった。その頃の僕は、そうやって正気を保っていました。そして少しずつですが「僕はなんで悩んでいるのか」という個人的な心理の牢獄から「人間はなにに苦悩するのか」という普遍性に満ちた世界に導かれていきました。

もうお分かりでしょう。
だから「ハミル師」なのです。

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