ハミル師(6)
21世紀に入ってから
2年に一度あるいは毎年のように来日する
ハミル師。
僕は記録などをつけていないので
定かではないのですが、
これからするお話は原宿アストロホールでの
ことなので2007年か2008年のこと。
このライブはハミル師とヴァイオリニストの
スチュアート・ゴードン氏のデュオ。毎回、デュオとしてのやりとりが豊かな、かなりテンションの高い演奏だった印象が…
…うーん、これからはライブを観たその日は
記録をつけることにしよう…ここまで記憶が曖昧なのは、やはりこういう時に問題がありますね。
ライブ終了後、サイン会の順番待ちの行列ができ、僕はこの時のために持参したあれを、そう、1983年のロンドンでハミル師からいただいたあの自筆の手紙を取り出しました。ソロアルバムのジャケットで見慣れた美しい筆跡は当時のままで、そこには「きみのバンドは素晴らしい!〜いずれプロデュースできるかも」と書いてあり、僕にとってはなにか自分の礎のような、まさしく家宝といえるものとして、四半世紀後のこの日まで大切に保管してきました。
いよいよ僕の番が来て、目の前にハミル師と向かい合う瞬間がきました。真っ白な髪、重ねた歳月、刻まれた皺とともにあの時の眼差しがありました。
「お久しぶりです〜」と挨拶し、僕は1983年のあの日のことを手短に語り、頂いた手紙の封筒をお見せしました。
興味深そうに見つめるハミル師に僕は手紙を取り出し、受けとったハミル師はしばらくその文面を読んでいました。
そして一言言いました。
「まったく記憶にない」
僕は上手く言葉が返せなかった。
ただ黙ってうなずいた、それだけでした。
そしてサインはCDにではなく、
ハミル師の2冊目の詩集にお願いしました。
今、このサインを見て、
気がつくことがあります。
これほど丁寧なサインは他にはない。
その後にハミル師に頂いた
どのサインよりも美しい。
思いがこもっている。
詩集だからなのか、それとも?
今では知る由がありません。
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