ハミル師(3)
はじめてリアルハミル師に出会えたのは、1983年初冬、ロンドン・ヴィクトリア駅前の
Venueの楽屋。
このときのハミル師のバンドK-Groupは、
ヴァンダー・グラフとは異なる
シンプルなロックサウンド。
パンクの開祖?とも言われるハミル師の
もうひとつのステージに釘付けになり、
茫然自失の1時間半を過ごした後でした。
興奮もさめやらぬうちに楽屋にむかい、
立ちはだかる屈強なガードマンに、
「私は日本からハミルさんに会いに来たジャーナリストだ。渡すものがある。ぜひ、通して欲しい」とお願いすると、
「いいよっ」とあっさりドアオープン。
すると楽屋のなかの4人のメンバーがすぐに視界に入ってきたのです。
脇目もふらずにまっすぐハミル師のところに向かい、僕から声をかけると、ハミル師はすぐにこちらを振りかえりました。あ、この眼差し、これなら僕の話をきいてくれそうだ!・・・なんというか、ニュートラルで、まっすぐな眼差し。ひととおり自己紹介を済ませ、最高のライブ体験であったことを伝えました。うんうん、それは本当に良かった。来てくれて心からありがとう!と言うハミル師の言葉の飾らなさ、率直さ、爽やかさ。複雑怪奇なヴァンダー・グラフ・ジェネレーターの、ある意味で暴力的な衝動性に溢れた音楽を導きまとめるリーダーとは思えない、気取りも傾きも感じられない人柄に、いい意味で裏切りに近いものを感じました。
そして、僕はその時制作中だった自分のバンドOmnienaから数曲をデモテープとして、是非聴いてください、感想を聞かせてください、と言いながらお渡しして、楽屋を後にしました。
それから約一か月後のある日のこと、
僕のCamdenTownの住まいのポストに、茶色の封書が届いていました。アルバムジャケットで見覚えのあるあの筆跡。
裏を返すとそこには
Peter Hammillの自筆サイン・・・
よくぞ心臓が口から飛び出さなかったものです。
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