超短編ファンタジーとして

お伺いします。
この写真が何に見えますか?

トンネルにしか見えない?あるいは
どうしても何かの顔に見える?

さてさて、
子供向けの童話から指輪物語まで、
それらはファンタジーと言う
小説のジャンルでくくられている。

指輪物語の作者トールキンは
ファンタジーを「現実の写し鏡」と言った。
僕は若い頃、SFとファンタジー小説に
没頭したくちで、
かなり様々なものを読んでみたのだが、
いろいろ読むにつれトールキンの言うことの
意味が腑に落ちてきた。

有名なくまのプーさんやピーターパンは
ビクトリア女王のもとで発展を続ける
帝国主義時代のイギリス社会における
子供の生きづらさが背景にある。
もちろん小説の中での彼らは
生き生きとした世界にいるのだが、
それは現実の世界が、大人の世界が
厳しいものであることの裏返しであり、
一見のびやかな物語設定のなかに、
そういった暗喩を見いだせる。
その意味においてファンタジーは
トールキンの言う「現実の写し鏡」であり、
印象そのままに受け取ってはいけない
と僕は思っている。
日本において人気を博す歌の多くは、
ラブソングだったり応援歌だったりするが、
一方でアニメなどの主題歌を聞くと、
興味深い内容のものが少なくない。

一聴では捉え切れない心情を歌うものや、
シュールな世界に肉薄するものがある。
となるとその中にもファンタジーな表現が
潜んでいても何ら不思議ではない。
8月20日にリリースする
「夜のファーカンダ」を一言で言うなら、
歌と音楽の超短編ファンタジー集。
3〜5分程度の楽曲を中心に収録の10曲の、
その歌詞はどれも「現実の写し鏡」であり、
言葉通りに受け取ってはつまらない!

たとえば「そこまで言える男は僕だけさ」
と言う曲があるがその歌詞は、
夫である男が妻である彼女への感謝を、
こんな言い方で表現している。
ありがとう君の愛撫
ありがとう君のナイフ
ありがとう君のライフ
ありがとうありがとう
ありがとう君はワイフ
ありがとう君はサイフ
ありがとう君こそ魂
ありがとうありがとう

これは特定の夫による妻への感謝ではなく、
何人もの夫の思いを集めたような感じ…
いくつもの妻像が鏡の中で1つになるイメージ

もしかしたら理解されにくいかもしれない。
でも、僕はそういう意図で書いている。

なぜそんなことをするのかと問われれば、
1人の具体的な妻への思いではなく、
妻という存在に人々が寄せる様々な思いを
1つのイメージにまとめてみたいから、
と答えるだろう。

仏像やお地蔵さんだって
そうなのではないか?
現実そのものではなく、
「現実の写し鏡」であること。

ファンタジー小説を読むときに、
それを現実と思って読み始める人はいない。
でも読み進むうちにそのファンタジーの
世界が現実のものに見えてくれば、
そのファンタジーはうまくいっている。

一方、日本において歌がある音楽で、
このようなファンタジーの立場を
表明しているものは圧倒的に少ない。
人々がそのようなものとしての音楽に
期待を寄せていないことの表れであり、
意識していないことの表れでもある。

夜のファーカンダは
10曲それぞれが超短編ファンタジーという
画期的なアルバム。
そう思って聞いていただけると、
ただ聞くより新しい発見があると思う。
あるいは発見しやすいと思う。
より楽しめることは間違いない。

歌詞は6編をKOW、3編を小俣慎一、
1編を小宮広が書いている。
あなたは、このファンタジーを楽しめる?

KOW's Music Site

私の名前はKOW。このサイト、そしてブログではKOWが携わる音楽へご案内します。作品、音源、動画、ライブスケジュールなどなど、KOWの音楽活動はこちらでどうぞ。 🔹ソロ 🔹キアトKIAT 🔹ファーカンダ 🔹NegAcoustika

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