エロスと音楽(1)

小学校5年の夏、荻窪の実家の近くに
杉並区立科学センターが開館した。
そこのプラネタリウムが気に入った僕は
夏休みの間中飽きることなく
毎日3回、通い続けた。

太陽が沈み星空になるまでの時間にかかる
「聖母の宝石」と言うクラシック曲が、
気に入りそのシングル盤を手に入れた。
しかしそのB面に入っていた曲のほうに
完全に心を奪われてしまった。

それはイタリアの作曲家マスカーニの
オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の
間奏曲だった。
何よりも心を奪われたのは、
その曲のクライマックスにあたる部分の、
数小節同じ音程で演奏されるパートで、
小学校5年の僕は官能と言う言葉の意味を
まだ知らなかったが、
そこに感じたものは官能以外の
何物でもなかったと思う。

クラスの同級生たちよりも
性の目覚めが少しばかり早かった僕は
音楽の中に感情を疼かせる感覚が
あることを知ってしまったのである。
それから何年か経ってイギリスの
シンフォニックロックバンドThe Enidの
この作品Aerie Faerie Nonsenseを
最初に聴いたときに受けたショックを
今でもありありと思い出すことができる。
何度聴いても飽きることなく、
今でも年に数回は聴きたくなる
自分にとって永遠不滅の名盤。
特にアルバム後半にあたる楽曲Fandの
2nd movementについては
僕はこの楽曲の中毒患者。
旋律やハーモニーのうねりは
聴く者の官能を揺さぶってやまない。

後年、知ったことなのだが、
このFandをR・J・ゴドフリーと共に
作曲したギタリストのF・リカーリッシュは、
このインストゥルメンタル曲を
背景から支える物語に
ヒロインのエクスタシーと死という
クライマックスを用意したという。

このアルバムがリリースされたのは、
僕が高校2年生の時だった。
その後マーラーを聞くようになって、
この音楽がその影響を色濃く受けている
ことに気がついた。
官能的であることにおいても。
僕はブルックナーも好きではあったが、
彼が奏でるのは天上世界。
それより世俗的なマーラーに惹かれる。

そんなこんなでエロスに愛されている
音楽が好きだ、と言うことに自覚したのは
高校を卒業したころだった。

(続く)

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