天使よ、さらなる沼へ

果たしてどこから攻めてみればいいのやら…
難しい音楽に関わることへの恐れ、
そして自信のなさ。
とにかくギターがあるのだから、
まずコードとリズムを奏でられるようにして
そこに歌を載せていくしかない。

弾き語るのにこんなに難しい曲を
やることになるとは思わなかった。
最初、ホント途方に暮れたよ…

この10年で、自分のものにするのに
もっとも手間ひまをかけた曲、
Empty,and Meaningless Hot。
ネガコースティカで演奏している。
第一楽章は基本8分の9拍子。
演奏するだけならまだしも、
このリズムの上に歌を当てはめていくのは
まるでジグソーパズルみたいだった。
ギターで弾けるようにし、
その上に歌を載せて行くのだが、
最初は歯が立たなかった。
それでも少しずつできるようになり、
ようやくカタチになったのは半年後くらい。
すると面白いことに
リズムの上に言葉と言うピースが固定され、
逆にリズムが狂いにくくなる。
しかしそれはあくまでも演奏が安定する
と言うだけの話で、そこに1番大切なもの、
つまり歌詞の心を吹き込むと言う
「歌」にすることがその先にある。
…何年かかったことか。
Empty,and Meaningless Hotは
川崎薫さんの最高傑作だと僕は思う。
彼が魂を込めてこの曲を書いたことを
僕は確信している。
殺意さえ漂わせる心象風景で始まったこの曲は、やがて受け入れがたい現実を受け入れるうちに、世界ははっきりとした輪郭を持って自分を受け入れていく。その物語は音と言葉に織りなされながら、18分のロックシンフォニーとして奏でられていく。

こんなすごい曲を歌わせてもらうことが
できて自分はとても幸運だなあ。

そしてこの5年で最も難曲なのが
キアトのレパートリーとして演奏される曲、
Ultimate Place、キアトではウルプレ。
キアトのキーボーディスト岩崎裕和さんが、
自身のユニットの曲として書いたものを、
キアト用に編曲し直して演奏しているが、
この曲もまた超難しい。
緩急自在に疾走する8分の7拍子自体は、
とてもスムーズでなじみやすいのだが、
問題はそのメロディとコード。
最初これは歌いたくても
まともに歌えず、当惑あるのみだった。
やりたいと言い出したのは僕だったが、
時期尚早でした、と降参しそうになった。
なんでこんなに難しいのか?
ある日、岩崎さんがこんな話をしてくれた。
「この曲はOpen Keyでできているんだ。譜面上では一応Cになっているが調性を決めていない。だからコードの響きがすべてを決めていくようなものだね」
コードの連なりは複雑であるが、
ルートは半音進行で進み、無理なく美しい。でもその上に乗るメロディーは、
転調に次ぐ転調で、ちょっとやそっとでは
とても覚えられるものではない。
「昔の話だけど、ウェザーリポートのジョー・ザビヌル直筆の譜面が手に入り、そこにOpen Keyって書いてあったんだ」
岩崎さんの曲はどの曲も
多彩なコードがちりばめられている。
音楽性はまるで違うけど
大好きなトニーニョ・オルタを思い出す。
あの自在さに少しでも近づきたい。
この難曲に取り組みたくなるのは、
自分の限界への挑戦と言うのもあるけど、
やはり音楽の豊かさ、奇想、楽しさが
てんこ盛りで詰まってるから…
こういった楽曲に取り組んでいて
苦しいのは、なかなか形にならないこと。

でも、できるようになったときは最高だ。
その先の表現はさらに高みにつながる。
道は相当長いが、やりがいたっぷりだよね。

…天使は頬杖をついて考える。
「救いようのない人間を沼から救うためには
どうすれば良いのだろう」と?

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